アメリカ車とイタリア車の両方の顔を持つクライスラーのイプシロンは、わずか2年程しか日本で販売されず、小さくてコロンとした形が特徴的かつ、インテリアはイタリアの上品で繊細なデザインが細部まで施されている車好きの心をくすぐるような1台です。デザイン性が高いことから中古車であってもクライスラー イプシロンが欲しいという方も少なくありません。しかし、中古車であればやはり故障(不具合)が気になるところです。今回は、クライスラー イプシロンの故障(不具合)や修理費用、リコール情報などと併せて徹底解説します。
目次
クライスラー イプシロンは故障(不具合)が多いのか?
クライスラー イプシロンに関する故障(不具合)の声
50代/女性
出先でパーキングに駐車し、出庫しようとした際に料金所でミッションエラーが発生してしまいました。すぐに馴染みの整備士を呼び、確認してもらうと、普通にエンジンがかかりました。また止まると大変なので工場に持って行ってもらい点検をしてもらいました。タイヤとの相性といわれましたが、そういったことが起こりうるのでしょうか?
30代/男性
故障とまではいきませんが、デュアロジックのギアがこれまで数回抜けました。定期点検をしていても、何度も経験するってどうなのだろうと思いますが、他は特に故障経験もないのでとりあえずは乗り続けます。
40代/男性
イプシロンを中古車で購入して1ヶ月ほどが経ちましたが、特に不調に感じることはありませんが、たまにギヤチェンジがぎこちない時があります。
50代/男性
デザインが気に入ったと妻に迫られ購入しましたが、ミッション周りのトラブルが多いような気がします。国産車よりも短い間隔で定期点検とメンテナンスをしているので、車が動かなくなったということはまだありませんが、やや面倒な車かなと思います。
クライスラー イプシロンの故障(不具合)が多い箇所
どの車においても工業製品である以上、故障や不具合が全くないことはあり得ません。
そのため、クライスラー イプシロンにおいても、故障や不具合を起こしやすい箇所がいくつかあります。
クライスラー イプシロンにおける故障(不具合)が多い箇所とはどのような部分なのでしょうか。以下にてご紹介します。
- ヘッドライトの不具合(故障)
- デュアロジックの故障(不具合)
- 油圧ポンプの故障や劣化
- ミッション周りのトラブル・故障
- オルタネーターの故障(不具合)
また、外車はコンプレッサーの故障や電装品などの故障や不具合が多いと言われていますので、上記の箇所と併せてメンテナンスや点検をしておくことをお勧めします。
クライスラーが発表しているイプシロンに関する故障・不具合・リコール情報
ボディ・コントロール制御ユニットに関する不具合(2016年1月29日届)
前照灯を制御するボディ・コントロール・ユニットにおいて、当該ユニットの制御プログラムが不適切なため、すれ違い用前照灯の制御電圧のしきい値が低いものがある。そのため、ヘッドライトスイッチの端子に錆び等が発生し、電気抵抗が大きくなると、すれ違い用前照灯作動時の制御電圧のしきい値を超えるため、すれ違い用前照灯が点灯しない。または、点灯中意図せず消灯するおそれがある。
対象車両
型式 | 車台番号 |
---|---|
ABA-84609 | ZLA31200005070768~ZLA31200005083261(平成24年10月1日~平成25年3月1日) |
クライスラー イプシロンに発表されているリコール情報は以上の1件になります。
販売された期間がわずか2年ということもありますが、これからリコール情報が発表される可能性もあります。
クライスラー イプシロンを所有している際は、リコール情報に注意しておきましょう。
なお、中古車で購入した場合、まれにリコール情報が通知されないケースがあります。クライスラー車種にリコール情報が発表された際は、敏感に反応し、必ず対象車両に含まれないか確認してください。
クライスラー イプシロンの各部品の修理費用
ここでは、クライスラー イプシロンの各部品の修理費用の相場をご紹介いたします。
あくまでも相場となり、工場によって工賃も異なりますので、修理をする際は、事前に見積もりをとって確認しておきましょう。
型式 | 車台番号 |
---|---|
コンプレッサーの故障 | 20万円以上 |
オルタネーターの故障 | 10万円以上 |
ヘッドライトの故障 | 無償対応の可能性あり |
クライスラー イプシロンは生産期間が短く、日本国内で所有されている台数も非常に少なく、修理費用などの相場が明らかとなっていません。
しかしながら、国産車に比べると高額になることは間違いありません。
中古部品を利用して修理することで、費用を抑えることは可能ですが、中古部品が原因で故障や不具合が多くなってしまうことも考えられます。
費用は高額となってしまいますが、修理をする際は、純正品での修理をお勧めします。
クライスラー イプシロンオーナーの評判
ここまで、クライスラー イプシロンの故障(不具合)やリコール情報についてご紹介してきました。
では、実際にクライスラー イプシロンを所有するオーナーの評判はどうなのでしょうか?ポジティブな評判とネガティブな評判をそれぞれまとめてご紹介します。
まずは、ポジティブな評判です。
- カーブの曲がりやすさが素晴らしい!
- コンパクトカーとは思えないほどの乗り心地
- デザインが美しい
- 運転を楽しませてくれるエンジン音
- 絶妙な色味(ホワイトクラウド)
- 高級感が漂う
- 意外にラゲッジは広い
次はネガティブな評判です。
- 消耗品が高い
- ディーラーが少ない
- ややシートが高い
販売期間が短く、数年所有しても同じ車に出会ったことがないというオーナーの方も多く、他の人と違う車に乗りたいという方にはおすすめの1台です。
クライスラー イプシロンとはどんな車?
クライスラー イプシロンはフィアット傘下のイタリアの自動車メーカー、ランチアが製造しているプレミアムコンパクトカーです。車のベースは親会社の車であるフィアット500を使用し、ランチアならではイタリア車に仕上がっています。
クライスラーという名前が付いていますが、クライスラーは製造に関わっていません。ではなぜクライスラーの名前が付いているのかと言えば、日本ではフィアットクライスラージャパンが販売していたためです。海外では、そのまま「ランチア イプシロン」と呼ばれているところもあります。
イプシロンは海外ではこれ以前にも初代・2代目が販売されており、クライスラー イプシロンは3代目に当たります。満を持して日本で発売されたイプシロンですが、2012年から販売開始し、2014年に販売終了と僅か2年間しか発売しませんでした。その後日本では、イプシロンの後継車としてフィアット・500Xとジープ・レネゲードが販売されています。
コンパクトカーに新たな価値を示した車
クライスラー イプシロンの前モデルである初代ランチア イプシロンはコンパクトカーに新たな価値を示した車として知られています。それまでのコンパクトカーの価値と言えば、値段が安いことと、ホットハッチ(普段使いとスポーティな走りが両立できる車)ということでした。
ランチア イプシロンはそこに新たな価値として「オシャレなデザイン」を取り入れました。外装のおしゃれさに加えて、豊富なカラーバリエーション、内装の素材を選べるなどの販売方法が功を奏し、大ヒットとなったのです。
このようなデザインの良さ・オシャレさを価値とする流れは他のメーカーにも大きな影響を与えました。現在では各メーカーのコンパクトカーで多くのカラーバリエーションが用意されているのが当たり前になり、デザイン性を強く打ち出した車も多くなっています。これはランチア イプシロンが生み出した価値が一般的に受け入れられたということの表れでもあるのです。
もちろん、クライスラー イプシロンもこの流れを受け継いでおり、エンブレムこそクライスラー(アメリカのメーカー)ですが、中身はイタリア車ならではの少しクセのあるオシャレなデザインとなっています。
持っている人が少ないレアな車
上で書いたようにイプシロンはイタリアンなオシャレさを売りにしたコンパクトカーです。しかし、日本ではクライスラーのエンブレムが取り付けられ、「アメリカ車なのかイタリア車なのかよく分からない車」になってしまいました。
アメ車好きの人からはコンパクトカーなど見向きされませんし、イタ車好きであればアメ車のエンブレムに違和感を感じます。このような理由からか、売上はあまり振るわず、日本ではたった2年で販売終了となってしまいました。
人気がなかったということは、現役で乗っている人はかなり少ない車だということです。エンブレムがクライスラーとは言え、デザインはしっかりイタリアのデザインなので、オシャレで人とは違う車に乗りたい人や、安いイタリアデザインの車に乗りたい人にはぴったりな車と言えるでしょう。
クライスラー イプシロンのグレードとスペック
クライスラー イプシロンはゴールドとプラチナの2つのグレードが用意されていました。ここではそれぞれの違いについて紹介します。
ゴールド
クライスラー イプシロンの標準グレードです。新車販売時の価格は235万円でした。海外では4人乗りで販売されていましたが、日本仕様には後部座席中央のヘッドレストと3点式シートベルトが追加されて、5ドアハッチバックの5人乗りとなっています。
海外では1.2L 直列2気筒ターボエンジンのガソリン車やディーゼル車もありますが、日本では0.9L 直列2気筒ターボエンジンのみのラインナップです。トランスミッションはフィアット500と同様のデュアルファンクション(デュアロジック)という5速のセミオートマチック機構になっています。
ガソリンはハイオクを使用しますが、輸入車としては比較的低燃費で、19.3km/Lとそこそこの数字です。もちろん最近の国産車には及びませんが、普段乗りとしても充分使える燃費だと言えるでしょう。
プラチナ
ゴールドの上級グレードで、新車販売時の価格は260万円でした。基本的な性能はゴールドと同じですが、バイキセノンヘッドライト、オートヘッドライト、レザーシート、クルーズコントロール、パワーサンルーフ、16インチアルミホイールが追加で装備されており、より高級感のある車になっています。
またこの2つ意外に「パープル」という限定車も販売されており、こちらはゴールドを基本としながらも16インチアルミホイールとバイキセノンヘッドライトを標準装備したものとなっていました。販売価格はゴールドと同じ235万円です。
その他の細かいスペックは以下の通りです。
サイズ | 3,835×1,675×1,520mm |
ホイールベース | 2,390mm |
車両重量 | 1,090kg |
乗車定員 | 5人 |
ボディ | 5ドアハッチバック |
エンジン | 0.9L直列2気筒8バルブICターボ |
駆動方式 | FF |
最高出力 | 63KW(85PS)/5,500rpm |
最大トルク | 145N・m(14.8kgf・m)/1,900rpm |
変速機 | 5速セミAT(デュアルファンクション) |
クライスラー イプシロンの中古車価格
クライスラー・イプシロンは日本で2014年に販売終了しており、クライスラーも2017年に日本市場から撤退しています。そのため、購入するなら中古車で購入するしかありません。
クライスラー・イプシロンの新車価格は、一般的なコンパクトカーよりやや高めの価格設定でしたが、現在の中古価格はかなりお手頃価格となっており、平均価格は64万円となっています。高くても車体価格で100万円を超えるものはほぼないと言っていいでしょう(総額でちょっと超える程度)。ゴールドとプラチナでもそれほど値段の開きは少なく、どちらも60~80万円前後の車が多いです。
ただ、そもそも市場に出回っている数がそれほど多くないので、自分に合った条件のものを探すとなるとかなり大変そうです。どうしてもクライスラー イプシロンが欲しい人はこまめに中古販売サイトや中古屋さんをチェックしておいた方が良いでしょう。
クライスラー イプシロンを中古車で購入する際に気をつけること
前述した通り、クライスラー イプシロンの中古車は、非常にお手頃な価格で出回っています。
平均価格も64万円前後とコンパクトカーのなかでも手がだしやすく、イプシロンの性能を考えるとすぐに購入したくなる方も多いでしょう。
しかし、中古車である以上、新車で購入した時以上に故障(不具合)が起こる可能性が高いです。
中古車で購入する際は以下の点を中心に確認をしたうえで、検討しましょう。
- 修復歴や事故歴がないか
- 車体にゆがみがないか
- エンジンをかけた際に異音がないか
- 近くにクライスラー イプシロンの修理を請け負ってくれる工場があるか
まずは、修理を請け負ってくれる工場が自宅付近にあるかどうかを考えなければいけません。
仮に、修理を請け負ってくれる工場までの距離が長ければ、クライスラー イプシロンが故障して走行不能になった場合、レッカー移動をしなければならず、修理費用プラスレッカー移動費用が発生します。
費用を抑えるためにも、安心という面でも工場が近くにあるかどうかということは非常に重要な点です。
まとめ
コンパクトカーながらも高い性能を持つ、クライスラー イプシロン。
残念ながら新車での購入はできませんが、中古車であればまだまだ状態のよいクライスラー イプシロンを所有することが可能です。
ぜひ、エクステリアはアメ車、インテリアはイタリア車のレアな車“クライスラー イプシロン”の購入を検討してみてはいかがでしょうか。